身体部位に基づいた英語のイディオム
イディオムとは、文字通りの意味とは異なる意味を持つ単語や慣用句のことです。
日常的な慣用句や用語で、現実的な意味ではありませんが、一般的な使用法では理解されています。(e.g. over the moon, see the light)
英語のイディオムにはさまざまな形式がありますが、その中には身体の部位に基づいたものがたくさんあります。私たちは、シュールなイメージを想像させるこういったイディオムが好きなのですが、想像するのも恐ろしいものもいくつかあります。
途方もなく古いにも関わらず、まだ現在も一般的に使われているイディオムもあり、英語の創作力と、代々生き残る力を示しています。
【I wore my elbows to the bone】
きつい仕事にはたくさんの_elbow grease_が必要です。重労働や肉体労働は、掃除や料理、機械作業など、手を使う仕事ならどれでも、何度も苦労して腕を曲げることになります。つまりこのイディオムは、あまりに必死に働いたので、皮膚が擦り切れて肘の骨が突き出てしまったという比喩的な意味を持っています。
このように、イギリス人は本当に気味の悪い比喩が好きなのです。
このイディオムは肉体労働に関係していなくても使えますし、人との関わりで一生懸命に取り組まなくてはいけないような感情的な場面でも使うことができます。たいへんな努力をしなくてはならないと感じるなら、どんな状況でも使えるわけです。スコットランドの詩人、アイヴァー・カトラーはこのイディオムが好きで、ここで見事に歌っています。
現在では、本来の意味から劇的に変化したイディオムもたくさんあります。イディオムの意味がどれだけ変化するかを示すよい例をご紹介しましょう。
【to apply the rule of thumb】
現在は_rule of thumb_を適用すると言えば、問題を解決するのに現実的な対応をするという意味ですが、実はこのイディオムの起源は、夫婦間の論争を解決した残酷な方法なのです。1886年にグラスゴーの裁判官_Sir Francis Buller_が下した、男性は自分の親指の太さまでの棒で妻を殴る権利があるという判決のことです。現在のイギリスでも広く使用されていますが、元の乱暴な意味ではありません!
【You’re pulling my leg!】
「I don’t believe what you’re telling me_._」や「you’re joking!」というのと同じ意味です。ユーモアのあるおかしい状況で使われますが、このイディオムの起源はおかしなことからは程遠いものです。実は、18世紀と19世紀のロンドンの犯罪者の世界から現われました。当時の強盗たちは二人組で行動することが多く、一人が無防備な被害者をつまずかせ、もう一人が地面に横たわっている被害者のお金や貴重品を盗んでいました。現在に「have your leg pulled」された場合は、だまされたり、欺かれたり、ちょっとした嘘をつかれることで、貴重品をなくすことはありません!
【I’m all ears】
このイディオムは3世紀ほど前から続いていますが、サルバドール・ダリの絵画のような、かなりシュールなイメージを想像させます。_all ears_といっても、文字通り耳だらけの身体に変身してしまうわけではなく、とても熱心に誰かの話を聞きたがっているという意味です。
【He was completely legless!】
パブに入りびたっているとこうなってしまいます。足が無くなってしまうという意味ではなく、ちゃんと立ったり歩いたりできないほど、ひどく酔っ払っているという意味です。お酒を飲み過ぎたときに、つまずきながら歩いたり、倒れかかったりする状態の誇張表現です。
【She’s chewing my ear off】
自分の耳を噛み切られたら、あまりその人と一緒に過ごしたいとは思わないですよね。でもこのイディオムは、耳をガブッと食べられるという意味ではなく、誰かが長々としゃべり続けるという意味です!これも、気味が悪くなるまで表現を大げさにしてしまった英語の例といえますね。
【Egg on your face】
間違いを犯したという意味ですが、たいていは、人前で恥をかくことや、ばかげて見えるようなたわいない間違いのことです。このイディオムがどこで始まったのか、はっきりしたことは誰も知らないのですが、アメリカのスラングだということはわかっています。下層階級の劇場の興行で騒々しい聴衆が、気に入らないときに出演者に向かって卵を投げつけたことからきている可能性もあります。または、夕食の席で男性が顎ひげに卵のくずをひっつけたままできまりが悪い思いをするような、基本的なテーブルマナーが由来なのかもしれません。
【We got off on the wrong foot】
何かの仕事を下手に始めてしまったときや、最初から間違ってしまったときにはこの表現を使うことができます。個人的または社会的な相互作用を表すときに使われることが多いイディオムです。誰かに初めて出会ったときに気分を害するようなことや、その人が理解できないことを言ってしまって、悪い第一印象を与えたときに使えばぴったりです。
【Caught red-handed】
またもや暗い起源を持つイディオムですが、かなりわかりやすい表現です。何か間違ったことをしている最中に見つかってしまうという意味です。例えば、事務用品の戸棚から便箋を盗んでいるときに上司が入ってきたり、誰か他の人とキスしている最中に配偶者が入ってくるようなときです。もちろん、すてきな読者のみなさんは絶対にそんなことをしたことはないとわかっていますからね!赤い色は、殺人や密猟を行ってまだ手に血が付いているのを表していて、これもまたスコットランドの法的な書類まで遡ることができるイディオムです。
あなたには、身体の部位に基づいた英語のイディオムで好きなものはありますか?
_eat your heart out, slip of the tongue, paying through the nose_など、他にもまだまだありますから、あなたのお気に入りを教えてくださいね!