英語の文法が間違っている洋楽ソング
詩人がそうであるように、ミュージシャンは曲に歌詞をつけ始めたときから英語の文法の規則を曲げてきました。リズム、拍子、感覚、あるいはこの3つすべてにぴったり合わせるように歌詞を書き、言葉が韻を踏むようにも考えなくてはいけませんから、ずいぶん困難な仕事だということです。
ですから、ミュージシャンが言葉を調和させるために、たまに英語の文法の規則を破ったとしても、何も驚くことではありません。
アーティストにとって、正しい英語の文法よりもっと重要なことは、感じていることや、曲とともに伝えたいメッセージをうまく伝えることができるかどうかです。
あるいはもっと単純に、厳密にいえば文法的に正しくない特定の語順の方が、もっとよく聞こえたり、歌ったときに耳に残ることがあるからです!
好きな人に「Love, love me do」と本当に言う人は誰もいませんよね?でもこの歌詞こそが、初めてポップチャートを席巻してから50年以上経った後も、いまだに人々に歌われるような耳に残る曲にしているのです。
今回は、完璧なポップソングへの探求のために、正しい英語の文法が無視されてしまった曲名の数々をご紹介したいと思いますので、あなたのお気に入りの曲名もぜひ教えてくださいね!
【Something’s missing…】
ロックンロールを生み出そうとしているときに、句読点をチェックする時間のある人がいるでしょうか?クエスチョンマークやアポストロフィなどの記号や句読点は、曲名から脱落してしまうことがよくあります。本当に誤植の場合もありますが、単にうっとうしい句読点で場所を取らない方が、CD やLPのジャケットが格好よく見えるという理由の場合もあります。
ザ・ストロークス はIs This Itと質問していますが、クエスチョンマークを付け加えるのを忘れています。そしてREMやThe Rolling Stonesほど大きなバンドが、アポストロフィを忘れています。ちょっと恥ずかしいですよね!
アポストロフィだけではなく、文字を丸ごと抜かしてしまったバンドもあります。最も頻度の高い文字はOとUの二つです。_your_が_yr_になってしまっている曲があまりにたくさんあって、もう数えきれません。しかもこれはショート・メッセージ・サービス用の言葉が発明されるよりずっと前の話です。
【Crazeeなつづりの間違い】
バンドは注目を集めるためなら何でもします。結局のところ、彼らは自分たちのレコードを買わせたいからです。彼らが使う効果的な方法の一つが、つづりをめちゃくちゃにすることなのです。
そして、この方法を何度も繰り返し使っているのが、伝説的なグラムロックのバンド、スレイドです。Mama Weer All Crazee Now (Mama We’re All Crazy Now), Cum On Feel the Noize (Come On Feel the Noise) and Gudbuy T’Jane (Goodbye to Jane)などは、彼らの大きなつづりの間違いの中のほんの数例で、しかも最大のヒット曲でもあります。
プリンスも、つづりをおもちゃにするアーティストです。_Nothing Compares 2 U, I Would Die 4 U, Money Don’t Matter 2 Night_のように、文字の替わりに数字を好むことが多く、あまり頻繁にやっているので彼のトレードマークになってしまいました。
【A big no-no】
ここでもまたザ・ローリング・ストーンズの登場ですが、They can’t get no satisfactionなようですね。ミック・ジャガーが本当に言おうとしているのは、can’t get any satisfactionということです。can’t get no satisfactionでは、完全に満足していて、no satisfactionだけが手に入れられないという意味になります。二重否定の逆さまの世界に入ってしまいました!
これは私たちもみんな日常会話でやってしまう間違いですが、音楽は言葉や実生活に結び付いたり、それを反映するはずのものですから、音楽の中に間違いが出てくるのも当然といえるでしょう。
二重否定が文字通りにとられたときには、曲の意味を完全に変えてしまう力を持っています。極めて有名な例をここにご紹介しましょう。
ビル・ウィザースは、ガールフレンドが去ってしまったときに、there is no sunshineだと言いたいはずです。しかし、ザ・ローリング・ストーンズが_can’t_と_no_を使ったように、ain’t_と_no_という二つの否定を使っているので、実際には彼女が去ってしまったときには_there is not no sunshineと言っています。彼女が去ってしまったときに太陽の光が射していたことになり、とても紛らわしいですよねっ?!
【Lay, Lady, Lie?】****
英語の文法的には、_lay_と_lie_の間には大きな違いがありますが、ロックンローローラーたちはまったく注意を払っていません。_lie_は横たわることで、面に対して水平になることですし、目的語もとりません。一方_lay_は、「You’re laying something on a table.」のように目的語が必要です。簡単ですよね?
これをエリック・クラプトンに説明してあげてください。
彼の_Lay Down Sally_という曲は、サリーという人にlie downと言うはずで、サリーをベッドに横たわらせるという意味ではないはずです。クラプトンは英語の先生に赤ペンでチェックを入れられますね。そして、見出しのボブ・ディランの_Lay, Lady, Lay_という曲名ですが、本当は_Lie, Lady, Lie_でなくてはいけません。これで彼が詩人と呼ばれているなんて!
【なぜ英語の文法は関係ないのか****…****】
最後に、作詞作曲に関していえば英語の文法は重要ではないことを証明する最高傑作を2曲ご紹介して終わりにしたいと思います。
もしジェイムズ・ブラウンが、文法的に正しくI Feel Wellと歌っていたら、この曲はこんなに大ヒットしていたでしょうか?
このジャニス・ジョプリンの傑作の歌詞がGood enough for my Bobby McGee and meだったとしたら、はたして同じように楽しく一緒に歌うことができたでしょうか?